認知行動療法

認知療法・認知行動療法とは、私たちのものの考え方や受け取り方(認知)に働きかけて、
気持ちを楽にしたり、行動をコントロールしたりする治療方法です。

自分が心配していることが現実に起こっているのかどうか、
もし起こっていたとすればどのように解決していけばいいのか。

現実に目を向けながらひとつひとつ確認していく。
それが認知療法です。


出典:こころのスキルアップトレーニングうつ不安ネット


「認知行動療法」がどのように活かされるのか、うつ病から回復して復職する場面で考えてみましょう。うつ病になったきっかけが仕事のプレッシャー だった場合、薬で元気を取り戻しても、職場で待ち受ける仕事の山と苦しく辛い日々の記憶と、さらに周囲から孤立していた不安と心細さが思い出されて、実際 の復職にはなかなか踏み出せないことがよくあります。

うつ病を引き起こしやすい要因が何も変わっていない状況での復職は、本人も不安になり、また不調を引き起こしかねません。認知行動療法では、例えば、きっ かけとなった「出来事を整理」し、「発症のからくりを探し」ていき、「考え方・心と身体・行動をどう改善したらいいか」を、私たち医療スタッフと共に考 え、試していきます。これに加え、職場に環境調整をお願いするケースもあります。

そうなれば、「職場でどんなふうにやれそうか」「どんな点を工夫したり、気をつけたらいいか」など、自分自身で具体的に思い浮かべられるようになります。 つまり、自分の「改善点」が具体的になってきて、それに必要な準備が進められ、自分の中で復職の見通しを持てるようになります。また、この改善が同時に再 発予防にも重要なポイントとなる点も見逃せません。

 

出典:メンタルヘルスとリワーク


認知行動療法はうつ病や自殺予防に対する有効性が示されている精神療法で、欧米を中心に広く行われていますが、日本ではまだ十分に普及していません。
平成22年1月に、厚生労働省の研究班が作成したうつ病に対する認知行動療法の実施マニュアルを厚生労働省のホームページに掲載しました。
また、平成22年4月から認知行動療法の診療報酬上の評価が新設されました。認知行動療法が薬物療法と同様に精神科臨床において広く実施されるよう、医療従事者への研修を行うなど、普及を進めています。


認知療法・認知行動療法は、近年発達してきた情報処理モデルないしは認知モデルを基盤にした治療法です。 つまり、私たちは、自分が置かれている状況を絶えず主観的に判断し続けているのですが、通常は半ば自動 的にそして適応的に行われています。しかし、強いストレスを受けるなど特別な状況下ではその判断に偏りが 生じ、非適応的な反応を示すようになってきます。その結果、抑うつ感や不安感が強まり、非適応的な行動が 引き起こされ、さらに認知の歪みが強くなるという悪循環が生じることになります。


○認知療法・認知行動療法の実践
認知療法・認知行動療法では、「自動思考」と呼ばれる、様々な状況でその時々に自動的に沸き起こってくる 思考やイメージに焦点を当てて治療を進めていきます。治療は対面式の面接が中心で、一回の面接時間は 30 分以上です。面接は、原則として 16-20 回行いますが、患者さんの状態にあわせて延長することを検討するこ ともあります。また、場合によっては、フォロ-アップ面接を行うこともあります。


認知療法・認知行動療法ではまた、ホームワーク(宿題)といって、面接で話し合ったことを実生活で検証しつ つ認知の修正を図ることが必須の課題となります。つまり、観念的な議論ではなく、あくまでも現実に目を向け た検証を基本とする点に特徴があり、日常生活が治療の場となるのです。

出典:みんなのメンタルヘルス総合サイト


うつ病への認知行動療法の効果とメリット・デメリット

2015.11.25 ヘルスケア大学から引用



薬を使わない治療法として期待される「認知行動療法」の概要、メリット、デメリットを解説します。



■医師との対話で進められる認知行動療法とは?


うつ病の人は、物事を悲観的に捉えすぎてしまい、その結果ストレスを溜め込んで病状を悪化させてしまいます。「認知行動療法」は、そうした考え方(認知)の歪みを正し、ストレスを溜め込まない精神状態をつくっていくための治療法です。認知行動療法では、たとえば、日常の出来事やその時に感じたことをノートや表にその都度書き込んでもらい、自分の気持ちを客観的に把握してもらう、といったことが行われます。その後で、書かれた内容に対して、別の考え方ができなかったか振り返ってもらい、悲観的な捉え方をしないようにしていくのです。こうした作業をくりかえし、自分の認知を変えていくことで、抱えこむストレスも少なくなる=うつ病の改善に役立つと考えられているのです。



■認知行動療法のメリット


認知行動療法の最大のメリットは、薬物療法とは異なり、はっきりとした副作用がない点です。このため、うつ病の症状が軽い段階では、薬物治療よりも認知行動療法の方が効果的な場合もあります。また、悲観的にならない考え方を身に着けていくことで再発の防止にも繋がります。薬物療法と併用することで、治療の効果が高まる、再発率が減る、といった報告もあります。



■認知行動療法のデメリット


デメリットは、治療が上手な医師もいれば、あまり上手ではない医師もいるため、すべての治療が上手くいくわけではないという点です。また、患者と医師とで「性格が合わない」という場合も治療は上手くいきません。背景として、日本では、保険点数の低さなどにより、認知行動療法を「治療法として非効率」と考えるクリニックが少なくないという側面があります。そのため、専門的な治療を行っているクリニックが少なく、治療法も広まっていかないのが現状です。



■効果の無い場合は主治医と相談を


認知行動療法は、明確な副作用のない安全な治療法ですが、その効果が出るのには時間がかかり、また、「治療を受けてみたけれど効果がなかった」という場合もありえます。うつ病を治療するさまざまな治療法のひとつとして考え、回復期に受ける、他の治療法と併用するなど、臨機応変に活用していくことが大切です。