子どもの“うつ病”、見逃しがちな理由とは?


「気分がひどく落ち込む、憂うつ」「やる気が出ない」、このような状態が続く気分障害のひとつとされている“うつ病”。現代社会では、心の風邪と言われるほど多く見られ、大人に限らず子どものうつ病患者も珍しくないといいます。
では、子どものうつ病にはどのような特長があるのでしょうか? 児童の精神問題に詳しい、めぐみクリニック院長の皆川恵子さんに話を聞きました。

●子どものうつ病は10歳前後から増える
うつ病は、脳内にある心のバランスを保つ“セロトニン”という物質の分泌が不安定になることで生じると言われています。実際に年齢は関係なく、うつ病になるものなのでしょうか?

「幼少期の頃にはあまり見られず、最近では10歳前後から見られるようになりました。大人は“憂うつ”とか“意欲がわかない”という表現などで症状を説明するのですが、子どもの場合そのように説明できないことがほとんど。ただ、漠然とイライラしていたり怒りっぽくなる、なんとなく不安がってお母さんの後を追いかけたりするといった行動が目立つようになると要注意です」(皆川先生、以下同)

それだけだと、子どものちょっとした感情の変化かと思い見逃してしまいそう。そんなときに、見極めるべきは感情が移り変わる変化の速度だとか。

「数か月とか半年とかで変わるのではなく、これらの行動は2週間くらいで急激に変化するのが特長です。普段は活発に遊びに行っていた子が外に出たがらず、家にいてもぼんやりしている、好きなゲームもしないとか、食事の量が減ったり、眠れなくなるなど、特別な原因があるわけではないのに、短期間でこのようなことがどんどん増えてきます。進行すると笑うこともなく、表情に変化もなくなるため親であれば何かおかしいなと気がつくと思います」

●うつ病の治療は投薬が基本
もし、うつ病を疑った場合、どのように対処すればいいのでしょうか?

「まずは児童精神科に連れて行って、速やかに治療を受けさせることをおすすめします。以前、身内が亡くなったショックから、うつ病になってしまったお子さんがいました。そのようなショックな出来事を受けると、普通はしばらく落ち込むものの、時間とともに活力を取り戻します。ですが、そのお子さんの場合は、しばらくうつ状態に気付かれず、数か月して症状に気付かれました。症状は重くなっていたものの、抗うつ剤等を処方して治療を行った結果、半年ほどで元気になりました」

ちなみに、子どもだからといって治りが早いということはないそう。セロトニンの分泌が不安定になるのは体質的な影響もあるので、適切な治療で早めの回復をうながすことが肝要のようです。


(構成・文:末吉陽子/やじろべえ)



『mamatenna(ママテナ)』 から引用