非定型うつへの接し方

非定型うつ病は、普通のうつ病(定型うつ病)と異なる特徴を持ちます。そのため、周囲の接し方も多少異なってきます。

 非定型うつ病の方は「気分反応性」という症状があるため、これが甘えだと誤解されて、「甘えているだけ」「こんなの病気じゃない」と批判されることがあります。周囲がこのように批判してしまうのはよくありません。

 また、「拒絶過敏性」という症状があるため、相手が言ったことを悪くとらえがちであり、周囲の方と口論になってしまうこともよくあります。

 

1.甘えだという言い方は禁物

 非定型うつ病の特徴に、気分反応性があります。

 これはとてもやっかいな症状で、「楽しい事や嬉しい事があると気分が上がり、イヤなことやつらいことがあると気分が落ちる」と状況に応じて気分が大きく変わるというものです。

この辛い症状を「甘え」「根性なし」と一刀両断されてしまうと、患者さんは大きく傷つきます。特に自分に近い人や関係の深い人からそう言われてしまった時のショックというのは計り知れません。

大きなショックを受ければ当然うつ病の経過も悪くなります。ショックから人間不信となってしまい、非定型うつ病の症状のひとつである拒絶過敏性が更に強まってしまいます。

 

2.拒絶過敏性には冷静に対応する

 非定型うつ病の患者さんには拒絶過敏性という特徴があります。これは他者の評価を過剰に気にしてしまい、相手の言動に対して過敏に「拒絶された!」と反応してしまう傾向の事です。

中には周囲が褒める意味合いで言った事に対しても、悪くとらえてしまうケースもあります。「今日は頑張っているね」という良い声かけに対しても「いつもは頑張っていないって言う意味か!」ととらえてしまったりするのです。

 拒絶過敏性が現れた場合の接し方としては、

 

・悪意はないという事実を冷静に淡々と伝えること
・悪く考えてしまうのは病気の症状ではないかと伝える事
・それでも納得してくれなければ深追いはしない事

 

を意識してください。

 

3.適度な厳しさも必要

普通のうつ病(定型うつ病)の方への接し方は、なるべくプレッシャーを与えないようにする事が大切だと言われています。しかし、非定型うつ病の方の場合は少し異なってきます。

非定型うつ病の場合は、適度なプレッシャーや負荷があった方が治りが良い事が経験的に知られています。そのため、時には厳しく「そこは頑張ろう」「それは自分でやってみようね」と適度な厳しさを持って接することも重要です。

負荷があまりに低すぎる状態であったり、負荷をあまりに避けすぎているのであれば、周囲の方が時に厳しく接して負荷に向き合わせるようにサポートする事はとても有効なのです。

どのくらいの負荷が適度なのかは、患者さんの症状や経過によりますので主治医と診察で相談して決めていくのが良いでしょう。そして、その負荷内のことであれば、なるべく自分の力でやるようにがんばってもらいましょう。

 

4.生活リズムを保つサポートを

非定型うつ病という疾患は、生活リズムが乱れやすい疾患であり、また生活リズムの乱れが病状を悪化させやすい疾患でもあります。そのため、「生活リズムを規則正しくすること」というのは、非定型うつ病の治療における鉄則です。

 生活リズムが不規則なままで、非定型うつ病がいつまで経っても良くならない、という事も往々にしてあります。

 ここでとても助かるのが、家族など周囲の方がサポートしてくれる事です。

  • 朝、起きてこない時は起こしてくれる。
  • 日中は昼寝などしないように見てくれる。
  • 適度な運動を促してくれる。
  • 3食規則正しく食事をするようにサポートしてくれる
  • 夜更かししないように見てくれる

もちろん、それぞれ自分の生活もあるでしょうし、全てをサポートするのは難しいでしょう。しかし出来る範囲でも生活改善のサポートしていただけると、それはお薬の治療よりも大きな効果を発揮してくれます。


出典:せせらぎメンタルクリニック